さて、もし、訴えを起こされたことを無視していたらどうなるでしょうか。
自分の主張を書面ですら出さず、返事をしなかったらどうなるでしょう。
浮気相手が腹いせに直接の訴えを起こされ、こんなものは無効だと無視してしまったらどうでしょうか。
この時、裁判所は、わざわざ相手方が出席もせず書面すら出してこないのに、親切に
「最高裁の判例にあるように、求償権がある関係に過ぎないのだから浮気相手には慰謝料は直接請求できません」
などと、その訴えを棄却したりはしてくれません。
裁判所は市役所の窓口のようなことはしないので、裁判所が「指導」をしたりはしてくれません。
だから、例えばまた、裁判所が原告が求めた損害賠償請求200万円に対し、
「事実はわかった。金額は少なすぎるから5千万円にすべきだ。」
などどという判決は決して書きません。
訴えを起こした原告が求めた200万円が基準になり、裁判所はそれを減額することしかしません。
訴えている当事者の内容を判決が越えるようなことはしないのです。
浮気相手を直接相手にした訴訟を起こした場合、訴えられてもその浮気相手が無視したままだと、裁判所は原告の主張をある程度認めた判決を出さざるを得ません。
そうなると、「浮気相手に直接請求は出来ない」という最高裁の判例があるのに、どういう趣旨の判決になるのでしょう。
これは意味としてはこうなると思います。
「求償権があるのは本来は夫婦の浮気をした側へだが、当の浮気相手は答弁をしてこない。これはある程度の反省と謝罪を示していると考えられ、これこれの金額ぐらいは支払いせよと判決する。」
なんてことになるはずです。
訴えた慰謝料の金額は大幅に減額はされるでしょうが、形としては浮気相手が負けたことになります。
もちろん、もしちゃんとその浮気相手が相手方として主張をすれば、先の最高裁判例によって棄却されます。
日本は法治国家ですから、いくら面倒だと考えたり言いがかりだと思っても、主張もせず応訴しないことには相手方の言い分が通り負けてしまいます。
それは裁判所に対して自分の主張を述べることを放棄、つまり相手方の言い分を認めることになるからです。